第90期 #14

結婚式のスピーチ

「続いて友人代表、洗井新之助さんにスピーチしてもらう予定でしたが突然盲腸炎で入院、急遽先輩の朝野さんが駆けつけてくださいました」
「どうもー。朝野です。名前だけでも覚えて帰ってくださいね。いやー今日は朝から変な日でね。特異日ってやつですかね。後輩の洗井がスピーチできなくなったという噂を小耳に挟み先輩として一肌脱ごうと思い立ち、今ここにいるわけなんですけどね」
「あの、洗井さんから頼まれたのではないのですか?」
「いやいや、いやいや。そこが特異日。だって午前中だけで三回もウンコが出たんですよ。それも下痢じゃなくて三回とも大層ご立派なしっかりしたやつが――」
「あの、おめでたい席なので下ネタはご遠慮願います」
「いや、ところが今日は下だけじゃなくて上のほう、ハナミズも出まくりだったんですよ。上から上水、下から下水、人間水道局か!」
「あの、ですからもっと普通の話を――」
「普通と言えば総武緩行線だね。おれ三鷹から千葉までの全駅構内の立食蕎麦屋を食べ歩いたんだけどさ。ていうかおれ立食蕎麦屋のオーソリティーとして斯界では有名で。今都内マップ作ってるんだけど。というのはチェーン店並みの安い値段ながらチェーン店よりうまいインディーズ系立食蕎麦屋探せば意外とあるんでその――」
「普通と言ってしまった私が悪うございました。でもいいですか、今、結婚式ですから。もっと夢のある話を」
「夢のある話と言えば宇宙旅行だね」
「そうでしょうか」
「無限の宇宙には無限の星があるんだよ」
「なるほど。ロマンティックですね」
「つまり無限の惑星があってだからどんな宇宙人も実在するんだ。たとえばハナミズ出まくり星のハナミズ出まくり星人は朝から晩までハナミズ垂らしてる」
「それはどういった……意味があるんでしょうか」
「それはね。ハナミズ出まくり星は妙に埃っぽいんだね。だからハナミズ出るほうが生存競争で優位なわけ。自然選択の結果ハナミズ出まくり星ではみんなハナミズ出まくりになった。ていうかハナミズ出れば出るほどかっこいい。地球で女が豊胸手術するのと同じさ。それでハナミズ星ではハナミズをできるだけ勢いよく出すために鼻の穴を大きくする整形手術が大流行でさ。ハナミズ星の美人コンテストではずらっと並んだ美女たちが一斉に鼻の穴をおっ広げてドバドバー――」
「はい、終了、終了ー!!」
「一方そのころ、ウンコ出まくり星のウンコ出まくり星人たちは――」



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