第9期 #1

拍手

 誕生パーティの式場で、二十歳の誕生日を迎えた友人の未来は、まぶしいほど輝いていた。幸せの絶頂だったはずだ。
 彼がケーキのろうそくを吹き消すと、それを囲む人々は一斉に拍手した。友人は婚約者の肩を抱き、グラスを目線に構えて、乾杯と大きな声で言った。
 まさにその瞬間の写真が手元にある。
 写っていたのは、拍手したみんなの手が合わさる一瞬。しかも、全員が同時に瞬きした一瞬だった。 
 悪魔の意思に支配された偶然というものが、世の中には本当に存在するのだろうか。
 ろうそくのおぼろげな明かりに浮かんだケーキは、まるで白い墓標である。人々はあたかも墓前に向かって合掌し、黙祷しているようにしか見えなかった。

 次の日、友人は事故で死んだ。


Copyright © 2003 のの字 / 編集: 短編