第88期 #27

折れても二人

「センちゃん、私この前中国の映画を観たの。女の子がみんなで首吊りしようってお話でね、村の大人に内緒でロープを集めたり廃屋を片付けたりするんだ。すごく楽しそうでさ、最後は半分寝ちゃってよく覚えてないんだけど、私もやってみたいと思ったのね。それで、やっぱり仲間がいるからセンちゃん一緒にやらない? 大晦日の夜に閻略寺の松とかで。親には初詣って嘘吐けばいいし、絶対あそこなら誰も来ないもん。きっと楽しいよ」
「うん、いいよお」
「絶対誰にも内緒だよっ。首吊りってばれたらすごく怒られるんだから」
「うん、あたしたちだけの秘密だね」
 そんな訳で、親友のセンコを仲間に引き入れた私は、終業式の翌日、一緒に宿題を片付け色々細かい事の打ち合わせをして、打ち合わせって初めてだったからそれだけでワクワク気分になって、でもロープをどこで買えばいいのか分からずに二人でインターネットを探したらホームセンターで売ってるらしく、暖かい日に自転車で十分の所にある何とかっていう木材とか材木とかノコギリを置いてる店で丈夫そうで安くて首に当てても痛くなさそうなロープを二本買って、帰りに肉まんを食べながら閻略寺にも寄ってちゃんと廃れているのと腐った松があるのを確認したら、あとは大晦日まで大人しい振り、紅白にイギリスのおばさんが出てるのだけ見てからお姉ちゃんお下がりのダッフルコートを着てセンコと合流して幽霊の出そうな真っ暗なお寺の庭で懐中電灯を使って何とか枝にロープを巻きつけて輪っかも作って、枝に登って除夜の鐘に合わせてせえので飛び降りたら、枝が二人分の重さに耐え切れなくて首を吊る前にぽっきり折れ、私達は葉っぱや枝や砂だらけの地面にどさって落ちて全身ぐしゃぐしゃになっちゃって、そう言えばあの映画も廃屋の柱が折れて失敗したんだなんて思い出しつつ、でも起き上がらなきゃと思ってコートを払ったけど何も落ちてくれなくて、何だか悲しくなったのかセンコが泣き出したせいで私ももらい泣き、涙も鼻水も止まらないまま歩いているといつの間にか近くの神社に辿り着いて、着物とか綺麗な格好をした人達がびっくりして色々聞いて来たのに言葉が出ない、そんな泣くばかりで何も答えない私達にどん引きしたのか、海が割れるみたいに道が出来たから、結局そのまま初詣をして手を繋いで泣きながら家に帰り、二人揃って初売りに出かけ、お年玉で新しいダッフルコートを買った。



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