第85期 #18

チューニングとリズムを

差取り、という言葉があるらしい。
周囲との微妙なズレを、差を修正する。自分の中の微妙なズレを修正する。
周波数にしてみるとそんなに違いはないのだけれども、そのほんの少しのズレが、大きな不協和音となってゆく。


妙だな、という違和感は、女の直感だな。女が少しだけ感じる事ができる。

妙子は絶妙に周囲と自分のズレを感じた朝に、今日のリズムと周波数に注意して、自分のズレを重心を少しだけズラした。
それが彼女の方法論で、自分を否定する事なく、他人を否定する事なく、過剰に肯定する事もない方法論だった。

妙音とは褒め言葉だと思う。 悟りとはいいイメージないけれど。

街では星も見えなくて、太陽にしか気づかない。星に願いをかけた。スターになった人は手の届かない人でもある。君はスターになれるよ、との歌は実は悲しい歌なのだ。夜にしか見えない星は夜型人間の。朝の太陽で露のごとく消えた。あの子は死んで、星になったが、みんなの夢を悪夢にさせじと、輝いている。だから、よく眠って。
どちらが夢でうつつなのかは、実の所、言えなかった。妙子は残酷な気がして。 どちらも本当だから。

自然にリズムと波長は皆知っているから。狂っていることも。ただ大幅に狂っていると思い込んでしまった。そう。最初の2ヘルツのズレから大幅になっただけのそれだけなのに。

その日も街の周波数は高かった。テンションの高さだけが忘れさせてくれる、解放。
蓄積される疲労とそれに対応されるべきカロリー。それがコンクリートジャングルのサバイバル術だから。

ごまかしごまかし我張ってきたら頑なはキレた。
無我にしたら笑いは消えた。
都会で自然と頑張らずいきるには、周波数の合わせ方と、相対和音の対応の仕方を。オクターブは、いろいろあるから。リズムにも8分には4も2もあるから。
それは否定せず肯定せず、否定と肯定もあるような、チューニングの方法の仕方と思えたから。

こんな例え話になったけど、 地球は大きい。太陽の進行も、星の進行も。
大地の進行も。



Copyright © 2009 金武宗基 / 編集: 短編