第83期 #2
「――すぐの実行は無理だ。だが機会は今しかない。伝達系が定着するまで……三日だけ我慢してくれ――」
*
今日、僕の部屋に初めて彼女がやって来た。
僕にはこれが三度目の彼女だ。うちにあげるのも彼女で三回目。
部屋に入った彼女は落ち着きなくキョロキョロしていた。そんな彼女を手早く着替えさせる。
初めてだから緊張しているね。これからずっとなんだから、慣れてもらわないとね。
そう囁いて彼女を引き寄せた。
――出逢いは鮮烈で、僕は一発で彼女を見初めてしまった。艶やかな毛並み、潤んだ瞳、優美な肢体。全てが完璧。
目が合った一瞬で僕達は通じ合った。
僕は金を惜しまずショップのオーナーと話をつけた。手続きやらで、連れ帰るまで数日かかったけれど。
彼女が来て二日目。
彼女は部屋の隅で静かに寝ていた。首には真新しい首輪が巻かれている。
ペットは室内で飼う物だ。そこは心得ていた。
犬よりも身軽な存在だから、勝手に出歩かないようにリードで繋いである。トイレも作った。
躾も早くからした方がいい。彼女の可愛い耳と尻尾を見ながらそう思った。
ご飯時にはミルクと焼き魚を用意した。
彼女はミルクを舐めて、魚を器用に食べた。
僕が教えた通りのいい子だね。どうだい好物は。美味しいかい?
その夜、僕は彼女の寝床に潜り込んだ。
そして彼女の中で射精した。
彼女が来て三日目だった。
耳と尻尾を剥ぎ取った彼女が静かに笑っていた。
僕がつけてあげた耳と尻尾、気に入らなかったの?
鋭い眼差しで睨みつけてくる。僕は興奮した。
「もう変態コスプレごっこは終わり。お前みたいな豚がいるから奴隷制度がなくならないんだ。いなくなれ糞野郎」
彼女の左目の瞳は赤く染まっていた。歪んで引きつった笑み。僕は興奮する。
「五、四、三」
指を折りカウントダウンをしている。
「二、一、ボン」
カチッと音がすると、白い光が全てを埋め尽くしていく。
ははは。僕の勃起は萎えた。
*
『――昨日、テログループによる爆破テロがまた起こりました。現場となったのは都心の高級マンションで、多数の死傷者が出ました。中には連邦議員である山本政志氏の孫、山本正義さん二十歳の名もあり、テロの標的になったのではという見方があります。連議の山本氏は強固な保守派として知られ、氏に対する報復と警告の行為ではと――』