第83期 #14

超宇宙戦機ボルティック・ドライオン

「もうこんな世界ヤダ! 誰も私を理解してくれない! 死んでやる!」

 十四歳でバカで優柔不断な私は、ビルの屋上で飛び降りる前に野次馬に向けて力一杯叫んだ。
 すると、群集の中から一人の黒スーツが現れ、私に話しかけてくる。

「お待ちください。どうせ捨てる命なら、派手に使ってみませんか?」

 そして私は最終人型兵器『ボルティック・ドライオン』に乗ることになる。
 地球侵略を目論むガイスト星人と戦うために。派手に死ぬために。




「愚かな地球人よ、死ぬがよ」
「早く殺しにこいボルティックレーザー!」

「来たなボルティック・ドライオン。この魔将バーダムが直々に相手をし」
「名乗ってないで殺しにこいドライオンクラッシャー!」

「ふっ、ボルティック・ドライオンよ。お前の快進撃もここま」
「格好つけてないで殺しにこいライジングボルトドラゴンファイヤー!」

「さぁ、最終け」
「ハイパーエクストリームドラゴニックタイラントジェノサイドブレイカー!」 





 そうして戦いは終わり地球に平和が訪れた。
 ガイスト星人の不死身の頭領、ゴッダマ帝王が復活することはもうない。私の最後の必殺技をくらって十一次元に永久に閉じ込められているからだ。
 死を恐れない私の戦いっぷりに、ガイスト星人は成す術もなく、恐怖した。人類は私の活躍に歓喜しっ放しだった。

 だが、死に損ねた私に対し全ては残酷なままだった。
 戦いの後、地球人と和平を組んだガイスト星人が私を大量虐殺兵器だと言い出したのだ。あろうことか地球人の大衆も同意し、『宇宙平和かっこわらいかっことじ』を目指すこいつ等は私という存在をボルティック・ドライオンごと永久凍結することに決定した。

 バカで優柔不断な私はやっと思い出す。「そうだ現実ってこういうものだった」と。
 毎度こうだ。ほんの少し希望をチラつかせて、かと思いきや手の平返してぽぽいぽい。いくらなんでもヒドすぎやしないかい?
 ちょっとでも「自分を理解してくれるかも」と思って頑張った私がバカだった。
 うん、認める。私は本当は死に場所じゃなくて生き場所を探していたってね。
 でもわかった。中途半端はよくない。初志貫徹。これが重要なのだ。
 うむ、私は学んだぞ。
 今度こそちゃんと死のう。







「もうこんな世界ヤダ! 誰も私を理解してくれない! 死んでやる!」

「お待ちください」




 そして私は、最終ガイスト星人型兵器『ディベルア・クァクラ』に乗ることになる。



Copyright © 2009 彼岸堂 / 編集: 短編