第82期 #30

天才嫌い

俺は天才という奴が大っ嫌いだ。
 昔から奴らと俺は比べれられて来た。
 俺がどんなに頑張っても、あいつらは俺の上を行きやがる。そのせいで俺はいつも不当な扱いを受けてきた。
 だから俺は考えたんだ。どうすればあの、まともに努力もせず才能なんていう物でのうのうと生きていくあいつ等を絶滅させられるか・・・
 考えた末、俺は行動を始めた。この間違った国を変えてやるため。
 まず手始めに政治家を目指した。あらゆるコネを使い、裏の世界にも手を出した。
 やっと政治家になり、国政に関われる様になるまで相当な時間がかかったが、それでも俺は諦めなかった。
 しかしここでも俺は天才と比べられた。俺よりも若いくせに俺よりも早く政治家になり、上からも一目置かれているような奴がいたのだ。
 「所詮君は秀才だね」
 当時の上司から言われた言葉だ。
 その言葉で俺はさらに天才への怒りを増していった。
 そしてその頃から俺は、裏の世界でも力を伸ばしていった。こっちのほうが自分に合っていると思ったからだ。
 まず目障りな奴を・・・あの天才呼ばわりされて鼻の下をのばしている野郎をコンクリに詰めて埋めてやった。
 当然皆訝しんだが、行方不明として片付けるように俺が操作した。遺書に見える書置きもでっち上げたからみんな納得した。
 「天才ゆえの苦労があったんだろうな」なんて事を皆して抜かしてやがった。ハハッ本当笑っちまうぜ。
 それからの俺を止められる奴はいなかった。
 裏と表をのし上がり、ついに俺は最高の権力を手に入れた。
 そして今日。ついに天才をこの世から消し去る「天才規制法」を可決させる。長かった俺の悲願も今日やっと実を結ぶのだ。
 「おい、見ろよあの人」
 国会の前で、道を行く俺を遠巻きにを見るスーツ姿の若者らがいた。
 「ああ、流石にここからでも溢れんばかりの才気が伝わってくるな・・・」
 おそらくうちの若集だろう。少し鼻を高くしながら俺は歩く。こいつらは俺の努力をしっかり分かっているのだろう。いずれこういった者達が次世代を担っていくようになるのだから俺のしている事は正し・・・
 
 「やっぱり天才ってのは格が違うな・・・」
 え?



Copyright © 2009 横田UMA / 編集: 短編