第82期 #13
俺には馬鹿で単純で純粋な馬鹿がいる…基彼女がいる。
「シンデレラっていいよね〜ゆうちゃんもそう思うでしょ?」
ば…じゃなかった彼女はユイカ、一応は俺の彼女でちょっと…いやかなり?不思議ちゃんである
「思わない」
なんでこんな不思議ちゃんと付き合っているのか…そんなのは単純に、好き。だからだ
「なんでー?お姫様になるんだよ?」
好き。と言ったのはべつに惚気たわけではない
「じゃあ、その本にお姫様になってどう幸せって書いてある?」
我慢して飲み込んだ分の言葉だから知らず知らずのうちに出てしまうだけなんだ
「そ…れは、だって王子様と一緒なら誰だって幸せでしょ?」
不思議ちゃんな俺の彼女はずっと俺の幼なじみだった
「もしかしたら、王子様は暴力をふるうかもしれないよ」
何時も一緒だったのにユイカの目は絵本にばかり向いていた、俺はそれが悔しくて
「そんなことないよ、王子様だもん、優しいに決まってるでしょ」
何度も意地悪をしていた
「決まってないよ。じゃあ暴力をふるわないとして、マザコンかもね」
意地悪をしてユイカが泣いた後、俺は罪悪感に負けて、泣いて母さんに抱き着いた
「王子様は自立してるもん!それにさっきから全部、昔のゆうちゃんのことでしょ?」
「うん…でも違うよ。」
俺は一冊のノートを取り出した
「それなに?」
そのノートの中を俺は開いてユイカに見せた
「俺が書いたシンデレラの続き」
内容は王子様が実は、暴力癖があってマザコンで…しかも継母は超絶意地悪!そんな毎日でシンデレラは疲れちゃうって話。
「でも、これは勝手にゆうちゃんがつくっただけでしょ?」
「ああ、でもさ…もしかしたら本当にこうだったかも知れない」
「違うかもしれないじゃん」
「うん、確かにね。でも確かじゃない」
ユイカが若干悔しそうに俺を見た
「でも…」
俺はユイカの手にノートをのせて
「だからさ、そんな不確かな王子様より俺を見てよ。」
「見てたよ」
「なら知ってるよね、俺…優しくなったろ?マザコンでもなくなったし、母さんも優しい」
「そうだね」
ユイカが笑った
「ゆうちゃん王子様に嫉妬してたの?」
「そうだよ、5歳のときから王子様は俺のライバルだった」
王子様に嫉妬した、君を愛するが故に…。