第81期 #25

餃子屋 リー

踏切防止キャンペーンの期間に
駅前の商店街は

軒並みシャッターを下ろし

交差点に一軒だけ開いている
中華料理屋の店長は中国人

店前に屋台を出し
ニンニクの効いた餃子の美味しそうな匂いを溢れさせて
隣がシャッター閉まっているのをいいことに
これでもかと匂いを撒き散らして

アイヤー!

餃子を焼き続けて
山のように餃子の箱を積み上げて
疎らなお客にアピールしながら
餃子を焼き続けて
アイヤー!

疎らなお客に餃子を売るのだが

ちっとも売れない

アイヤー!

中国人の店長はタイムサービスだと
値段を下げて
勢いよく餃子を焼き続け
アイヤー!

渾身の力で胸を叩き
そして
何故か苦虫を噛み潰した顔をして
体を小さく震わせた

餃子、さっぱり、売れない

アイヤー!

中国人の店長は屋台の中から飛び出し

閉まっているシャッターを片っ端から蹴り上げて鬱憤を晴らすと

アイヤー!

渾身の力で胸を叩き
そして
何故か苦虫を噛み潰した顔をして
体を小さく震わせた

餃子、百円に、するね

もはや採算など考えなかった
これは聖戦である

中華人民四千年の歴史を
たかだか百年に一回の不況によって
コケにされてたまるかアルヨ!

アイヤー!



上着を頭にかけられて
両手を手錠をかけられて

店長がパトカーに連行されていく

どうやら近所の住民達に
うるさいと通報されたらしい

最後の客の俺は

餃子の袋を握り締めながら
店長の乗せたパトカーを
桜の舞う坂道に消えていくまで

ずっと眺めていた


眺めていた



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