第80期 #4

チャイム

緑は自分の部屋で眠っていた。
今日、学校を早退してきたのだ。
緑は子供のころから体が弱く運動もこれといってできるものはなかった。
緑の家族は母と父だけだった。二人とも仕事が忙しく、家にはほとんどいない日がつづいていた。
いつもは一人になれている緑だが、今日はとくに孤独をかんじていた。今日は授業参観だった。
中学生にもなって親が授業参観にくるはずもないと思っていたのに、友達の母や父はきていた。恥ずかしがりながらも自分の両親を紹介する友達をとてもうらやましいとかんじていた。
きっと二人とも今日が授業参観だということも知らないだろう。
そう思うとむしょうに孤独をかんじてしまう。
どうせ私は一人ぼっちだ。と緑は思った。きっと母も父も私のことなんてどうでもいいのだ。と思った。
とそのとき玄関からチャイム音がした。
重い頭をあげながら緑は玄関へとむかった。
そこには友達がたっていた。
「大丈夫?一人なの?」
どうやら心配してきてくれたようだ。
ふつふつと感謝の気持ちがあふれてきた。友達が帰り、またベッドに戻った緑は私は一人じゃないのかもしれないと思った。
そう考えるとちょっとうれしくなり、天井にむかってニコっと笑った。
さっきまでかんじていた頭の痛みがすこし和らいだようにかんじだ。
とそのとき二度目のチャイム音がなった。
でようとするまえにだれかがいそいでいるようなパタパタという足音が聞こえた。部屋のドアが開く。入り口に母と父がたっていた。
「大丈夫?学校の先生からきいたの」
たしか今日は二人とも会議があるときいていた。二人とも呼吸が荒い。
緑はニコっと微笑んだ。



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