第77期 #13
「僕は、ドキッとする」
新製品の緑茶のティーバッグには、『かわいい女の子』というラベルが貼ってあった。
お茶を飲もう。
ティーバッグの袋を千切ると、中に小さな女の子が丸まって寝ていた。小指程の身長。
なぜか、女子高生の制服を着ている。
指に挟んだ袋の中で、彼女と僕の目が合った。
「こんにちは。初めまして」
かわいらしい可憐な声。くりっとした大きな瞳。ハタハタと長いまつ毛。
長い黒髪と、少しだけ短いスカートから出た長い足。白いブラウスが清楚を醸し出す。
彼女は、ティーバッグの切れた口からちょこんと小さな頭を出して言う。
「お茶の時間……?じゃ。早く下ろして……」
僕は、彼女をテーブルに降ろす。彼女は、ちょこちょこと歩いて、僕が用意しておいた湯のみに向かった。
彼女は、湯のみの中にちょっと手を入れて、湯加減をみる。うん……。と彼女は小さく頷いて。
彼女は、制服を脱ぎはじめた。
僕は、ドキッとして目線をずらす。でも、ちょっと横目で見たい。恥じらい、隠す隙間から見えるスタイルの良い体のライン。
一瞬胸元へ視線を向けて、外す。意外と大きな膨らみ。
彼女は、服を全部脱ぎ終わると、ちゃぽんと湯のみの熱い湯の中に、体を入れる。
息を吐き出すように言った。
「くう〜。あっっ熱い〜」
彼女は、身を縮めるようにして熱さに耐える。白い透明な肌が、淡く赤く染まっていく。
「あなたは……。彼女は、居るの?」
彼女は、熱さに耐えながら、僕に話し掛けてきた。彼女の体の周辺のお湯が、緑色にじんわりと染まり始めた。
「うん。そうだね。気になっている女の子は居るんだけど……」
僕は、彼女と恋愛の話しをした。学校のことは、勉強のこと。男友達のことや親のこと。短い時間の中で、色々な話をした。
やさしい微笑みの彼女に、僕はとっても素直になれた。
とっても聞き上手で、親身になって僕の話を聞いてくれる。かわいい女の子に優しくされたのなんて初めてだ。
僕は、彼女に恋をした。
「……」
急に静かになった彼女。それまで直視できなかった裸の彼女を見る。両手をダラリ。彼女は、ぐったりとして湯のみの口の所で伏せっていた。
僕は、彼女の身体を見る。
彼女の身体と皮膚は、しわしわに涸れ果てて、お婆ちゃんになっていた。
僕は、動かなくなった彼女を濃い緑色のお湯から、引き上げる。
僕は、彼女をゴミ箱に捨てた。
「あ〜美味い。やっぱり食事の後は、緑茶に限る」僕は、湯のみのお茶をすすった。
おわり