第59期 #27
このたび、世界タイトルマッチという舞台で、宿命の日本人対決をむかえることになりました。岡山県出身、チャンピオンの蚊取り線香・諸星選手。そして栃木の秘密兵器、挑戦者の山中ザウルス選手。このお二人による対談をお送りします。夢の対談です。
山中「どうも初めまして。ボクシングひとすじ、山中ザウルス。今日も減量中。」
なにひとつ反応をしめさない蚊取り線香・諸星。
山中「諸星くん、試合本番は、正々堂々、ファイトしようよ!」
山中ザウルスが椅子から立ち上がり握手を求めるが、完全に無視する蚊取り線香・諸星。
山中「恐竜は絶滅してしまったけど、当日はリングで、山中ザウルスが火を吹くよ!」
諸星「火を吹く種類の恐竜なんていないさ。そいつは漫画かなにかの、世界だぜ。(カメラ目線)」
テレビの前のチビっ子(岡山県)「イェイ!」
山中ザウルスはあっとばかりに口を開き、手で声をおさえる。何事もなかったかのように目を細め、眠ったような表情でコーヒーに角砂糖を入れる蚊取り線香・諸星。※1粒
テレビの前のチビっ子(岡山県)「よし! 山中ザウルスもこれで終わりだな。とんだ甘ちゃんだぜ。もう勝負がはじまってることに気づかねえなんてな……。スポーツはビビったほうが負ける、心と心の戦い。所詮、より平常心を保てるやつが強い。言ってみりゃ、にらめっこみたいなもんよ。山中ザウルス、おまえはもう諸星のダンナに喰われちまってるのよ!」
おしぼりを広げて顔を拭き、一旦、さっぱりする山名ザウルス。何事もなかったかのように気さくに質問する。
山中「蚊取り線香・諸星くんこそ、このリングネームの由来を教えてよ。」
諸星はさらに角砂糖を入れながら興味なさそうに答える。※2粒
諸星「聞きたいかい?」
山中をじっとにらむ諸星。しばしの間、沈黙する2人。
テレビの前のチビっ子(岡山県)「カモン!」
諸星「おまえのパンチなんてそうさ、蚊トンボみたいなもんだ。何匹でてこようが、蚊取り線香の前にポトポトポトポト(3粒)……床に落ちてゆくだけさ。」
山中「甘党?」
驚いて顔をあげる蚊取り線香・諸星。
テレビの前のチビっ子(岡山県)「こいつ、人の話を聞いてねえのか!」
同(栃木県)「そうだ、山中。それで良い。飾らない、ありのままのピュアな自分でいること。これが逃げずに戦うということだ!」
山中「甘党?」
諸星の鼻の穴が広がり、ポーカーフェイスが破壊される。