第52期 #1

はつかねずみ

「鼠色って、灰色のことだよね?」

「うん、だろうね。」

「はつかねずみは白いのに。」

「どうしてだろうね。」

「うーん…雪で出来てるのかな?」

「それじゃあ溶けちゃうんじゃないかな。」

「ふぅむ…雲で出来てるのかな?」

「空からおっこちたのかもね。」

「放り投げたら、空に戻れるのかな?」

「はつかねずみは重いから、むつかしいね。」

「ははぁ…わかったぞ。」

「何が?」

「はつかねずみがおっこちた理由だよ。」

「へえ、どうしてだい。」

「やわらかかった雲が肥え太ってしまって、おっこちた弾みに固まってしまったのがはつかねずみなんだ。」

「ふふぅん、そうかもしれないね。」

「土の上で痩せこけたら、また空に戻るのかな。」

「さぁね…おっと。はつかねずみが来たからこの話はおしまい。」

「そうだね、そうしよう。…ねぇ、林檎色って赤だよね?」

「うん、そうだね。」……



Copyright © 2007 篠未来 / 編集: 短編