第46期 #24
<前回までのあらすじ>
崖の上に立つ一軒家へ男は遂にアザラシを追い詰めた。炎上するボルボ。男はあらかじめミス・ミントが考案してくれた作戦(巨大な捕獲用の網の取っ手部分を持って頭上に掲げ腰をくねらせて踊り、つまり取っ手部分を踊りの一部にすることにより(バーダンス)アザラシに捕獲用の網を気取られず近づく)により、見事捕獲に成功。しかしここからアザラシは脅威の粘りを見せる。持久戦である。アザラシはノートパソコンを持ち出し、負けじと男はポテトチップスとコカコーラを準備。
持久戦である。
「コロニーは結局助からないみたいですね」
「ああ」
「あれだけ期待されて。けど駄目ですね。皆燃えてしまう。皆助からない」
「ああ」
「燃えていく。燃えていきますね」
アザラシはモニターに宇宙コロニーを映し出す。ネット中継されている宇宙コロニーの映像である。南の空に赤々と光る宇宙コロニーの、その拡大映像だ。コロニーは全世界の人々が見守る中、ゆっくりと燃え尽きていく。
「コロニーはそんなに人々の憧れの的じゃなかった。お前は知らないだろうけどな。裏で色々汚いことも行われた。技術競争。それから技術の盗みあい。宗教上の理由で非難する団体も多かった。本格的な宇宙生活の為の、初めてのコロニーだったから」
「人間は大変だったんですね。でも今は全世界の人が彼らについて悲しんでます」
「そうだな」
「人は死にますから」
「そうだ。しかし、あれだ。こういう話がある」
「はい」
「俺の親戚のおじさんは行方不明なんだがそのおじさんは不老不死の薬を開発したんだ。それを飲んでおじさんは俺達の前から消えた」
「へえ。で、彼は今どうしているのでしょうね」
「思うんだが」
「はい」
「何ていうか。落ち続けているのじゃないかと思う」
「それはこういうことですか?」
アザラシは動画編集ソフトで映像を作り上げた。
永遠に落ち続ける男がモニターに映し出される。
「わからん」
「そうですか。ところで私達がこうしている間に500年が経ったようですよ。私はずっと私達をビデオに撮っておきました。見ますか?」
「ああ」
「早送りで見ましょう。なにせ500年ですから。ふふ、早いですね。500年なんてあっという間だ。すぐに追いつかれ、そして追い抜かれるのでしょうね」
燃え尽きていく宇宙コロニー。落ち続ける男。早送りされていく男とアザラシの500年。
それらがモニターに並んで表示されている。