第43期 #1
「ねぇ。ママ。」
「ん?なあに?」
「あのね、パパは何処へ行ったの?」
「パパはね、遠くのほうへいっちゃってね。もう戻ってこれないんだよ。」
「なんで?お仕事?」
「…にたようなものかな。」
「ママは寂しくないの?」
「…寂しくないよ。優斗がいるから」
「嘘だ。」
「…なんで?」
「僕は、パパがいなくなったら寂しいよ。ママがいても寂しいよ。ママは…寂しくないの?」
「本当はね…寂しいな。ママも。」
「じゃぁ、言えばいいのに…。いつも、ママは我慢するんだもん。」
「……!!」
「ママは、いつも泣きたいとき泣いてないでしょう?僕は泣くのに…。」
「…」
「ママは強いね。僕は寂しいのに。泣いちゃうのに。」
「…ママは弱いよ。優斗よりも…ずっと弱いよ。」
「なんで?ママは強いでしょ?泣かないし。」
「泣かないのが強いことじゃないのよ。」
「ふーん。でもね、ママ。泣きたかったら泣いてもいいってパパが言ってたよ。パパよりも強いのかな…?パパはママがいなくなったら寂しいって言ってた。悲しいって言ってた。」
「…優…斗。」
「ママは…違うの?寂しくないの?悲しくないの?」
「…そうだね。泣いてもいいんだよね。すごく悲しいよ。すごく寂しいよ。」
「じゃぁ、強くなくてもいいんじゃん。そのかわり」
『僕が強くなるから』
子供はどれだけ大人の心を除けるのだろう。
どれだけわかるのだろう。
この子に希望を持とう。
そう。守ってくれるのでしょう?
私も守るから
貴方も守って…。
生きることは1人じゃできないから。