第42期 #8
両手がとても冷たいです。
こんなに寒い日は、どうしても仕様がありません。わたしは、だからホットチョコレートを、生クリーム付きでいただくことにします。それから、おなかが減るのでドーナツもいただきます。
組み立て式の木製タンスの上には、ダスティーミラーが陶器の痩せたシンプルな植木鉢の中で、たおやかに佇んでいます。いそぎんちゃくのような葉っぱは、銀白の色がとてもきれいで、わたしはすぐに気に入りました。
外は、もう限りなく黒に近い色に染まっています。窓から見えるネオンの光は、人工的な美しさを悪びれもなく主張しています。あの光が、ぜんぶ線香花火だったらよかったのに。それか林間学校の時みたいに、ひっそりとしたキャンドルファイヤーでも。
部屋の中は、まあるく明るいです。わたしの部屋にはあまり多くのものは置いていません。ですから、部屋全体にしみじみと明かりが行き渡るのです。
しん、しん、しん、しん――。
きっとこんな音色を奏でながら、わたしの頭上にそれが注がれているのでしょう。
寒さがどんどん厳しくなってきました。これは部屋の中にいても、仕事で屋内にいてもわかることなのです。なんというか、感覚としか言いようがないです。そして、それは子供のころから一度として、間違えたことはありません。でもわたしがわかるのは、寒さだけなのです。――寒いということが、大好きだからかもしれませんね。
目をつぶると、ホットチョコレートがわたしのからだの隅々まで行き渡ります。おおきなしゃぼん玉がはじけたように、正座でしびれた両足に触れた時のように。わたしは祈るように、目をつぶったまま、ほんの少し上を見つめました。やさしい生き物が、すぐ側にいるような気がしてほっとします。
ことん。
わたしの頭が左前に傾きました。
ことん……ことん……ことん……。
今度は右前に、また左前に、右前に。
室内にいながら、わたしは船を漕ぎ始めてしまいました。昨日はほとんど寝ていませんでしたから、その反動が今きているようです。わたしは普段長い時間寝ることが多いので、徹夜をするのはけっこう勇気と根気がいります。
明日はというと、休みです。とてもうれしいです。そんなふわりとした気持ちのまま寝ることができるのは、もっとうれしいです。
ということなので、少し早いですが、疲れているし心がねむたいので寝ることにします。
おやすみなさい、また明日。