第40期 #3
豪勢な高層ビルの群れを通りすぎた、スラム街に額に無残にも大きな傷を負った体格のいい男が鬼の形相で足を進めていた。
「リーファンの家を知ってるか?」
男は声を荒げて通りすがりの人に言い放った。
「あんただれだい?」
「俺の訊いてることだけ答えろ」
「し、しらねぇ」
その傲慢な態度には、誰もが苛立ちを覚えたに違いない。また、別の人が通ると、男は唐突にぶしつけに話しかける。
「リーファンの家を知ってるか?」
「リーファンは死んだ。日本軍の一員として、戦場でな」
「黙れ、訊いてることだけ答えろ」
男の勢いはものすごかった。なにかに追われているかのように、なにかにつき動かされているかのように。
「あの信号を左に曲がって、三件目のアパートの二階だよ、あとは、自分で調べろ」
ヒビがあちこちに入っているコンクリートのアパートだった。男は、周りの奇異な視線を気にせずというより、気にしてる余裕すらないのか、リーの家へと足を進めた。後ろの方では、数人の男たちが殺気だたせていた。
男は呼び鈴を鳴らさず、勢いよく玄関のドアを開けて、中を見ると、そこに、ベットの上で苦しそうに寝ている老人がいた。
「通達を出せ。」
男はまくし立てた。老人は、一瞬驚いたが、なにかを悟ったように、静かに口を開いた。
「お前さん、向井隊長だね。話はファンから聞いてるよ。お前さんが同じ日本陸軍兵なのに、朝鮮人というだけで軽蔑してたこととか。おそらく、ファンの最期のきっと」
「第二部隊突撃!おい、お前ら朝鮮の豚どもは俺たち日本人のかわりに死ぬために戦地にきてるんだ、なにを怯えている。いけ、突撃だ!ファン、お前は、俺の前で弾よけになれ、さ、いく……」
その時、空からなにかが落ちてきた。
「手術は成功した。」
「あぁ〜、あなたの、いや、ファンのものを見せて、死ぬ前に一目だけでもいいから、ファンのペニスを見せて。」
「うるさい。黙れ、貴様さえ黙らせれば、誰もこの事実を公表するものは消える。なんで、この俺が、この俺様が、朝鮮人なんかのものを……しかも、俺より立派なものを……う」
話はこれで終わりです。彼の家は伝統的な貴族であり、朝鮮人の奴隷を何人も雇っていたらしい。彼の手術をしたのは、噂じゃ、ブラックチャックらしい。彼の子孫は、噂じゃ、チョコットボール向井らしい。はい、ちゃんちゃん。