第34期 #4

道路局役人の役得

あれでもない、これでもない・・・・・・
部屋中に洋服を広げていると、ニヤニヤしながら母が入ってきた。
あなた理想が高すぎるのよ、妥協してさっさと結婚しちゃいなさい、といつも通りに言われるだろうと思っていた。
すると母はポケットから小さなリモコンを取り出した。
「あなた、今日デートでしょ。いいものあげるから、がんばんなさい。」
信号を自由に操作出来るリモコンだと言う。こんな物、一体何に使えと言うのか。そもそも、何故こんな物を持っているのか。
「これはね、昔つき合ってた人から盗んだの。」
将来有望視されていたお役人に振られた腹いせにやったのだとか。日本に一つしかない物だと自慢していた物だったそうだ。
さすが私の母親。結構ドロドロした恋愛をしていたのね。
リモコンの使い道は全く思いつかないが、母から勇気をもらった気がした。


今日は彼の車でドライブ。
会話が弾み、夜も更けてきて、ムードが盛り上がっていった。
赤信号で停車。
彼がキスを求めてきた。
もちろん私も求めに応じる。
この瞬間が永遠に続けばいいのに・・・・・・

私はリモコンの事を思いだした。
ボタンを押して、信号機を赤のままに。
私たちはキスを続けた。長い長いキスだった。
唇を離してお互いに見つめ合う。
次の行き先は決まっている。
私は青信号のボタンを押した。
しかし、信号は赤のまま。リモコンが壊れてしまったのだろうか。

対向車線をふと見ると、黒塗りの車が激しく上下に揺れていた。


Copyright © 2005 ゴーヤベイベー / 編集: 短編