第276期 #1

大学進学

「優くん、卒業したら都の大学に進学するの?」と眞が聞いた。
「うん。都の大学に受かったんだ。大学に行ったら、やりたいことがいろいろあるんだよ」と優が答えた。「眞は?」
「私は地元で就職することになったの。親にそう言われて……」眞は少し落ち込んだ表情を見せた。「大学では何をやりたいの?」
「そうだな、いろんなサークルに入って、ゼミも二つ取りたいし、インターンシップもやってみたい。アルバイトもたくさんして、その経験を生かしてYouTuberにも挑戦したいんだ。そして将来は外資系に入りたい。その大学なら、いろいろ挑戦できると思うんだ」
わくわくと語る優の姿を見ながら、眞の顔には寂しさが浮かんでいた。
「そっか……それなら忙しくなりそうだね。もうあまり会えないかもしれない。せめて三月に、もう一度会おう」
「いいよ」優はそう答えた。

――桜の季節が過ぎ、やがてゴールデンウィークも終わった。ある六月の平日、退勤した眞は街で偶然、優に出会った。
「えっ?」眞は驚いた。「都にいないの? 何かの休みなの?」
優は笑って答えた。「いや、最近は実家暮らしなんだ。あまり外に出かけてなかっただけ」
「どうして? もしかして退学したの?」と眞が尋ねると、
「え? 俺、通信制大学だよ。だから今はサークル活動やりながら、バイトもして、YouTuberもやってるんだ。来月には海外の外資系でインターンシップがあるから、その前に実家で荷物の整理とかしてるんだよ。あれ、言ってなかったっけ?」と優は答えた。



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