第272期 #3
デートの別れ際、少し甘くてとても苦い長めのキスをした。
別に一夜限りの関係ってわけじゃない。
体だけの関係な訳でもない。
ただ合わなかっただけ。
体の相性は良かった。
会う度にしていた。
初めはお互い本当に好きだった。
だけど、付き合っていくうち性格の相性が悪いことに気づいた。
それでも好きだったからと付き合い続けて早一年。
僕たちの心は限界になっていた。
会って、体を重ねて、普通のデートをする時は喧嘩ばかり。
仲直りだと言って、また体を重ねる。
そんな事ばかり繰り返していた。
甘い時もあった。
寝てる時の顔。
あの時間だけは平和だった。
甘い時間はそれくらいだった。
それ以外は全部、苦い時間だった。
本当は甘えたかった。
強がってばかりの僕は、相手を苛立たせた。
それが駄目なんだって、分かっていたのに止められなかった。
「これで終わりにしよう」
泣いて泣いて、終わりにした。
お互い好きだけど、少し嫌いだった。
甘くて苦いキスをした。
そんな雨の日。