第269期 #1

唯一無二の映画

「CGでええやろ。戦争映画を撮るとき、本当に人を殺してるんか?歴史映画を撮るとき、本当に侍を雇うんか?存在するのはわかるけど、撮影するのに本物は必要ないやん。」
Xさんの伝言だ。映画監督の山下は頭を抱えている。



リアルを追求し、この世で唯一無二の映画を作りたい山下にとって、Xさんの出演は不可欠だった。Xさんまたはその一族が出演してくれなければ、彼の理想とする「完璧な映画」は実現しない。しかし、Xさんの言い分ももっともだった。




幽霊の存在が科学的に証明されてから、すでに3年。幽霊家族であるXさん一族は、メディアへの露出を極力避けてきた。「存在するのは認めるけど、俺ら静かに暮らしたいんや!」というのがXさんの主張だ。どうやらホラー映画への出演は、完全にNGのようである。



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