第266期 #4

私にとって『君』は、長く隣にいてくれる人だった。暖かい愛で包みこんでくれて、我儘を聞いてくれる人だった。そんな君が消えた。今度の君こそ最期まで一緒にいてくれると思ったのに。そんな事はなかった。
一番目の君は時に人を傷つけるほど優しかった。私はその優しさが好きだった。溺れさせてくれる優しさが好きだった。
二番目の君はちょっと意地悪だった。私だけをからかう性格が好きだった。私の扱い方が上手かった。
三番目の君は至って普通の人だった。特別優しいわけでも、特別安心出来るわけでも、意地悪をしてくるわけでもなかった。そんな普通なところが好きだった。
四番目の君は俗に言うメンヘラで、重いところが可愛かった。小動物のような見た目にちょこちょこ動き回るのが可愛かった。そんなところが好きだった。
五番目の君は一緒にいると心地が良かった。偽らなくても一緒にいられた。その安心感が好きだった。
でも君は必ず去っていってしまう。私の何が悪いのだろう。新しい君に出会うたびに、新しい君に合わせて行動した。自分を捨てて行動した。五番目の君の前だけでは、偽っていなかったけれど。もしかして、僕の代わりに君が偽っていたのかな。偽ることに疲れてしまったのかな。
僕のせいだ。僕が自然体でいたから疲れてしまったんだ。今度の君の前では、ちゃんと、偽らないと。。。こんな事してて幸せになれるのか?
分からない。僕にはもう、何も、



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