第25期 #1
ぐしり、ぐしり、ぐしり。 おおきく白い歯が肉の繊維を噛みしだく。牙と呼ぶべきかもしれないそれが肉を抉り、骨を砕いてゆくのを私はうっとりと見つめる。その歯茎に指をはわせ唾液とまざりあった血をすくい、ぺろりと舐める。潮の味。なまぐさい。おいしそうに見えたのに。あまりおいしそうに肉を食うから、私のこともおいしく食ってくれそうだったから食われているのに。 おいしくない。そのことだけが、ちょっと癪だった。