第240期 #1

東京文化大学

王さんは中国人で、昔の日本留学生。結構前に日本に留学して、また中国に帰国した。
ただ王さんは日本語学校と専門学校を転々として、結局大学に行かずに、専門学校卒で中国に帰った。いわば、専門卒です。大卒ではない。
しかし専門卒は中国で認められないので、王さんは嘘をついた。日本の大卒と名乗っている。でも実際にある大学の名前を出したら、その学校の校友たちにバレるかもしれないから、架空の大学の名前を考えた、その名は「東京文化大学」。
いかにもリアルな大学の名前っぽいね。
その学歴で、王さんはある日本語塾に入社、教師として働いている。学歴は偽物ものの、日本語力においては実力者なので、だんだん昇進して、分校長になっている。
王さんは部下に「プロフィールに俺の学歴書かないで」と指示している。
そして平和な日々は続く。王さんは日本語教育に没頭している。

今年はまた新人日本語教師の募集をやっている。王さんは部下が集めた履歴書を読んでいる。そして、なんか馴染のある大学名が目に入ったみたい。王さんはよく見たら、その応募者の出身大学は、「東京文化大学」だった。



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