第239期 #1

タクシードライバー

私は中国のある町に住んでいて、プライベートでよくタクシーを使う。
中国は基本スマホでタクシーを呼ぶ。
ある日、タクシーに乗って、万象ショッピングモールに行く。
車に乗ったら、何気なくタクシードライバーに「最近面白い事ある?」と聞いた。
そしてタクシードライバーは、話を始めた。

「まあ同僚のタクシードライバーの話ですが、その人、夜の方をやっていたんですね。まあ深夜タクシーということ。」
「で、ある日、霊園に行く客を乗せたんですね。アプリで。その客は女性で、何も言わずに車に乗ったんですね。」
「まあ深夜だし、1時くらいかな。あの霊園は周りに何もないんですよ。もう普通の客なわけじゃないですね。」
「そして霊園に着いたら、そのタクシードライバーは車の扉の音を聞こえなかったんですね。後ろを見たら、その客はもういなかったんですね。」
「まあ怖くて、車を出て、周りを見たら、誰もいないんですね。」
「その同僚は本当にビビって、その後はもう夜のタクシー運転をしないってことでした。」

私はそのエピソードを聞いて、「怖い話ですね」と返事した。

そしてタクシードライバーは続ける。
「そうですね。まあ昔は幽霊を乗せたら、料金を貰えなかったんですよ。でも今全部アプリなので、幽霊でも料金をちゃんと払ってくれるんですね。」


「あ、そう」と私が。

「そうなんですよ。有り難いですね、今の時代。だから我々幽霊ドライバーも、ちゃんと料金を貴方たちから取れるんですよ。はい、着きました。」

そのタクシードライバーは振り返って、その頭に、顔はなかった。



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