第210期 #1

ダニー・カリフォルニア

 生まれは信州。パパは警官で、ママはヒッピー。
 松本で彼女はハンマーを振り回してた。
 もしあの光景を壊そうとしたら対価を償わされるよ。
 彼女は空しさ以外、何も知らなかった。
 それにしても君のツレは僕を何だと思ってたんだい?

 黒いハンカチ、愛しのアルプス。
 上田で銀行を強奪。
 彼女は逃走者。反逆者、そして絶世の美女。
 彼女は陽気に言うんだ、「坊やはどこへ行きたい?」って。
 45口径の熱い銃を見下ろして。
 生きるためのもう一つの道へ。

 ナガノよ、安らかに眠れ。
 いっせいに解き放て。
 ナガノよ、笑って見せて。
 彼女は僕を導いている。
 だから僕は君を導くよ。

 彼女はいい女で、奮闘屋。
 ちょっと明るくなったときに、気がつくべきだった。
 「チマガリ・センリ」みたいな名前で。
 その日はやってきた。
 僕にとって悲劇の時だったさ。
 銃に一発こめて、彼女はもう一人命を盗んでいった。
 僕は死ぬほど彼女を愛しているよ。

 ナガノよ、安らかに眠れ。
 いっせいに解き放て。
 ナガノよ、笑って見せて。
 彼女は僕を導いている。
 だから僕は君を導くよ。

 誰が君のもう一面を知っていた?
 誰が、人が誇りのために死ぬって知っていた?
 君にさよならを言うのはあまりに辛い現実だ。
 あまりに辛い現実で。

 音量を上げろ、天賦の才持つクリエーター。
 最初は一つのつまみ、後で11こ押し上げる。
 彼女はついに飯山へたどり着けなかった。
 宮中の警官はただノルマのために撃ったんだ。
 アップルロードの地にて彼女は最後に一番大切なものを守っていった。
 笑うとき、心が少し傷むよ。
 あまりにも早く逝ったね。

 ナガノよ、安らかに眠れ。
 いっせいに解き放て。
 ナガノよ、笑って見せて。
 彼女は僕を導いている。
 だから僕は君を導くよ。



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