第207期 #3
"十分に熱せられた銃が好き。あなたの次に好き"
それ言うの待ってって。ちょっと言うのまだ早いって。まだだって。
"アギトをぐっと、奥歯をぐっと、食いしばって"
そのまま千まで数えて引き金。銃痕・イン・ザ・頭蓋。
『また頭蓋かい?』
「そうなんだよ」
『カレイニナはよくはずしてしまうね』
「もっと機嫌取らなきゃいけないかもしれないな」
かもしれないって時はいつでも必然なんだ。
コーヒーを飲む。
俺が仕事中にコーヒーを飲むとき、俺はこの仕事がせめてフレックスであってほしいと思っている。そうすりゃもっと楽しく過ごせるのに。コーヒーを飲んだりしながらさ。
「またカレイニナを抱いてくるよ」
『僕が思うに君は』
「なんだい?」
『弾まで抱いてないんじゃないか?』
じゅ、じゅ。
じゅうぶんに、ねっ、ねっ? せらせら。
カレイニナが歌い出す。照準をつけられず、一人では狙いも定められない。俺はレバーを倒して冷却ガスを噴霧する。
【撃ち抜くことリスト】
【れんか】(チェック済み)
【ふうせん】
【キャンディ】
【目の黒いアザラシ】
ガスが噴霧されるかたわら、俺はリストを見てため息を着く。上司に電話をかけようとするが、彼はまだnoonから続く会議に参加しているから無理。
『時々僕らが何の仕事しているか分からなくなるときないかい?』
「分かるよ。この仕事やめて、また面接するとき何て言えばいいか分からないんだ」
『僕は誰と話していたかとか、contextとかが、もうだめだね』
僕は服を脱ぎながら、異世界にいるであろう精霊について考える。もし嫌なやつと合うときに、精霊がそいつの頭をぽかぽか殴っていたら、とても和むだろうって。別に嫌なやつじゃなくてもいいんだ。書類でもいいし、虹でもいい。俺の代わりにとにかくぽかぽかやってくれたら、いいなって思うことにしてる。
"愛を込めて7mm込めて"
俺は今朝のトーストについて考えてる。雨が降っていて、ちん、の音が聴こえなかった。
"私の銃床が重傷なの"
今度レコードを買おうって、雨が強い日に考えていたことを思い出した。でも家にレコードプレイヤーは無い。
俺はカレイニナを抱く。冬の燭台みたいに冷えた銃身をじゅうじゅう暖めて、また撃てるようにする。
"次は?"
「ふうせんだよ。もう一度やってみよう」