第206期 #2

小山さん

小山さんのことが気になってしようがない。同じ会社の営業の人で営業だからおもてに出てしまうことが多いため事務員のあたしとの接触は時間にしたらたったの10分くらいなはずだ。こんな気持ちを抱いたのはほとんど最近で出会って(入社して)もう5年も経っているのにたまたま一緒のエレベーターに乗り合わせたときにハッと意識をした。もし、今何かしらの故障でエレベーターが止ったとしたら。と仮定しそれは既にかなりの妄想を掻き立てあたしと小山さんは狭い個室に閉じ込められ酸素が薄くなる中意識が朦朧とする中自然に抱き合いキスをかわし大丈夫? うんだって1人じゃないもん。そんな些細な会話をしつつ一時の抱擁を味わう。なるほど小山さんはあたしの妄想の中では立派な彼氏なのだ。
「着いたよ」
エレベーターが5階にチンと陳腐な音を鳴らして着いたときあたしは多少ニヤついていたので小山さんは不気味そうな顔をし口角を少しだけ上げた。始まりそうで始まらない恋。そんな曖昧なときが一番至福の時なのかもしれない。片思いは勝手に妄想できるもの。小山さんはいつも遅く会社に戻ってくる。



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