第2期 #4
にもう一度問いただしてから僕は、そんなもん水虫撃退とかいう問題じゃなくてただ単に大火傷するだけだろと勧告してやったのだけど、さすねん大火傷さすねん水虫を火傷させて殺すねんとか言ってまるで聞く耳を持たない。そんな情報をどこで仕入れたのかと聞けば、どこで聞いたかよく覚えとらんけど朝起きたら思い出しとった、とか、嬉しそうに説明するので、それは夢だろと僕は親切に言ってやったのだけど、がはははと笑って諦めてくれない。僕はやりたくない。それに友達が足に大火傷するのも気の毒だ。
それでも僕が熱湯の入ったやかんを受け取ってしまったのは、いわゆる恐いもの見たさというヤツなのか。洗面器の中に足を置いて僕が上から熱湯を注ぐ。滅多に遭遇できない場面ではある。ところがいざ僕がやかんを傾けようとすると、ちょっと待てとか言ってこの男は足を引いて逃げた。やっぱりやめるのか、と言うような目を僕がしたのだろうか、違うねん違うねんおれ恐がりだからあかんねん、とか言い訳しながら、ちょっと待っててやとか言いながら、隣の部屋に走って行きガムテープを持ってきた。俺を椅子に貼りつけてくれそれから足も洗面器に貼りつけてくれとか言うので、それじゃあいざやばい時に逃げられないだろと僕は言ってやったのだけど、いいねん逃げられたらあかんねん我慢して火傷さすねんとか言うだけだ。危険じゃないだろうか。それでも僕はガムテープでこの男を椅子に貼りつけて逃げられないようにしてしまった。
じゃあ本当にやるけどいいんだねと聞くと、聞くないちいち聞かれると恐いねん早よやれやと怒られた。まず様子を見ようとして僕がちょっとずつやかんを傾けたりしてると、何しとんねんコラそんな風にすると余計恐いやないか、やるんなら一気にいけやこのボケナスとまた怒られた。仕方無く僕が熱湯を一気にぶちまけると、ぐわあ、と案の定この男は悲鳴を上げて椅子ごとひっくり返った。
真正面に居た僕も顔に点々と火傷をしたのだけど、本人はまともに熱湯を浴びた上に椅子に固定されていたのですぐに水冷するとかの対処ができず、それが悪かったのか火傷で一週間も入院する羽目になった。それでも退院してくるとこの懲りない男は、今度は足に針金をぐるぐると巻いてそこに電流を流すという誰が考えても無謀極まりない撃退法をどこからともなく仕入れてきて、しかも、コンセントの差しこみをしてくれと僕に頼んだりするのだ。