第181期 #3
今日もこの町にはいつもと変わることのない日常が流れそして、いつものように夕暮れが訪れる。 今日という1日に終わりを告げる薄紅色の夕日は静穏なひと時を与えてくれる。そんなひと時は1度思考をやめぼんやりと窓の外からの風景を眺めたくなるものだ。 彼女もそうなのだろう。彼女は窓際に腰をかけそこから見える風景をぼんやりと見つめている。何を考えているのだろうか、相変わらず表情の読めないその美しい顔は何か人を惹き付ける魅力があるのだろう。 話しかけようかと思ったが彼女の端麗さと夕日が重なりあった特集な美しさは人を近寄らせないような雰囲気があった。 しばらく俺は立ち尽くしその情景に恍惚としていた。
「どうかした?そんなところに突っ立って。」
後ろの存在に気づいた彼女は自身から声をかける。艶やかな微笑を浮かべた彼女は窓から入り込む夕日も薄くした。
「特に意味があったわけではないよ。ただ少し見とれていただけ。」
「私に?」
いたずらっぽく笑う彼女の言葉はどういう意図があるのかは俺には分からない。
「まあ、そうかもね。いくらお前を見ていても飽きないし。」
「珍しく素直だね。」
俺は何も言わず彼女の隣まで行き窓からの風景を眺める。心做しかさっきよりも夕日が鮮やかに見える。
「ここから見える景色、綺麗だよね。それに見とれてぼーっとしてるといつの間にか時間がたってるんだ。あなたとの時間も同じなのかな。」
「さあな...まあ少なくとも今はそうなんじゃないかな。」
そんな会話をする夕日の魔力にかかった2人はしばらくぼんやりと窓からの風景を眺めていた。この2人の光景は決して色褪せることはないだろう。