第177期 #9

阿部守夫の大冒険

総選挙出馬初当選、代議士の息子は地盤を引き継ぎ、選挙に打って出た。私大卒、サラリーマンに親の七光りで就職し、中途半端のまま、国会へ、他の息子たちは首都の国立大学に、入学卒業しています。しかし彼はそんな親の威厳も全く関係なく私大に入学、あまり勉強はしたくなかったのでは、サラブレッドの常識知らずの物怖じしないタイプの彼は志半ばだった父上の意思を恣意的に忖度した周りの方々に配慮され、重要ポストを歴任することになります。人事の隙間にはまり総理大臣まで。しかし、暴飲暴食のストレスがたまり、腹の調子を悪くし、辞意を表明されます。その前に北朝鮮の拉致問題では時の総理大臣の副官房長官として、金王朝の独裁者の雰囲気を味わってしまったのです。日本でいう粛清は役人や大臣、次官の更迭など、狭い役所の中のこと。しかし、隣の国は完全抹殺、テロ行為の温床に、彼は深くはまっていくのであります。憲法改正、秘密保護法、共謀罪、戦前の日本を北朝鮮がまねている、これで取り締まらなければ自身の思う政治は出来ない、その維持のためには、いつか自身に法律が及ばぬよう、独裁的政権を維持しなければならないことを十分理解している。だから教育者を語る、腹心の友に傾注し加担する。これでは日本の未来はない。五輪を開くために条約の締結を諸外国に遅れてはと矛盾に満ちた、立法に全力を上げるのである。「国民のため」の謳い文句に騙されてはいけない。『国家のため』と置き換えた方がしっくりくる。国連人権委員会報告者の問題ありとのレポートにプライバシーを理解できない官房長官が人権擁護するために、役人のスキャンダルと政府広報新聞に記事を書かせ、国民を騙すやり方は戦前の特高警察より劣る手法。共謀罪を運用する公安警察部門はこの間が抜けた政府要人は格好のターゲットになることを、今、阿部は知らない。そのうち米露のスパイ映画のごとく、全幅の信頼を負った諜報員に2重3重のスパイを飼っている状態と向き合うのである。こんな隙だらけの政府に国民のためにと国家を守れるのか、警察や自衛隊のための法律を整備し、国を守るどころか、自身も国家権力に取り締まられる。目標を見失った政府関係者よ、彼に騙されるな、理解不能なショートテンパーなヒステリーに付き合うほど我々は暇ではない。もっと高度な政府組織の運営を企画立案、法制化できる頭のよい政治家、リーダーが欲しいこの頃である。



Copyright © 2017 Gene Yosh(吉田仁) / 編集: 短編