第164期 #1
『良いですか?あなたは妖精。決して、人間に恋してはいけませんよ』
お母様が怖い顔で私に言う。
「大丈夫です、お母様。人間の国へ潜入調査するだけです」
私はそう言って家を出た。
私、杏は妖精。
人間の国へ潜入調査。というのも、人間が私達の国の宝を盗まれて、犯人が人間だから探すの。
でもそこが___
「イケメンだあ!」
その名もイケメン学園と呼ばれる学園で、男子がほぼ全員イケメン。
残念な人もいるけど。
私イケメン好きだから、犯人がイケメンならやばい。
「君が転入生の杏ちゃん?僕、悠斗」
悠斗君?
イケメン!
「杏です、よ、宜しくね」
深々と頭を下げる。
「こいつが転入生?キモ」
悠斗君以外の人が言う。妖精に悪口言うとバチ当たるよ!
私が顔をあげるとそこには別のイケメン!まさかこの人?
「何ジロジロ見てんだよ」
睨みつけてくる。こいつだー!
「あのねぇ、妖精に悪口言ったら…!」
私は慌てて口を塞ぐ。
お母様に『それと、人間に妖精だとバレるような行為をすれば、あなたは消えてしまいますよ』って言われたの忘れてた!
「妖精?何だよ、それ。こいつキモいだけじゃなくてオタク?」
そう言うとその悪口イケメンは立ち去る。
何よあいつ!言うだけ言っといていなくなるとか!
「ごめんね、杏ちゃん。あの子は翔、口悪いけど、気にしないで」
悠斗君って優しい…。
好きになりそうなくらいに。