第158期 #15

ホットヨガをする乙女を見守る会

乙女の汗はシングルモルトでできている。額に浮かんできたら気を配って、流れ出す瞬間に口に含むべし。乙女はあはんとひとつあえいで頬を染めるであろう。唇がふるると揺れたらもう少し、乙女の口からもう少し動いておきたいだかなんか言う。その通り、ホットヨガははじまったばかりだ。

会長、ちょっといいですか。なんだね、今乗ってきたところなんだがね。乙女の衣装ですが。うむ。レオタードでしょうか?いいか、レオタードはミスミドルの皮膚に張り付いている繊維のことだ、乙女は黒パンストと決まっているよ。会長、黒パンストの下には何を?きめの細かいチェックの三角、もしくはなにも穿いていない。穿いていないんですか?乙女はフィット感を重視する、フィット感を得るためには外見など気にしないのだよ。なるほど、よくわかりました続けてください。

乙女は両足を広げて寝そべる。アスファルトは冷たく気持ちがよい。関節を十分にのばし、息を長く吐く。長く吐く。乙女の息がかかるとぼくの鼻の穴は広がる。乙女の匂いを一つ残らず回収するために鼻は自然と広がってしまうのだ。黒パンストは徐々に食い込みを見せる。乙女のデリケートゾーンは無邪気にこんにちは。そういえば妙な音楽がかかっている。ゆったりしたリズムで、日本語でない複雑な言語の歌。乙女はそれに合わせて動いているように見える。

会長、ちょっといいですか。なんだね。アスファルトの上でやってるんですか?そうだよ、冷たいからね。夜?もちろん、夜更け過ぎだ。通常、ホットヨガは室内でマットの上で行うのでは?マット?ええ、ヨガマットです。そうかマットか、なるほどなるほど、それはいいことを聞いた。知らなかったんですか?

マットの上に黒パンストの乙女だ。洗面器一杯のローションが傍らにある。

会長、ちょっといいですか。なんだね、もちろん室内だよ。いやホットヨガじゃなくなってるような。何を言うんだい、マットの助け舟を出したのはそっちだろうが。いっときますがヨガマットは薄っぺらくたいてい狭いですよ。いいんだよ、薄かろうが狭かろうが、黒パンストにローションで十分成り立っているから。どう成り立ってるんですか一体。つまりね、これはあくまでもホットヨガだ、未成年淫行にはならないわけだ。いやいや、会長、乙女は未成年ではありませんよ。なんだ君、僕に逆らうのか?乙女は30からです。いや自分、逆に気持ち悪いわ。



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