第157期 #12

導く者

俺は失敗が嫌いだ。

何故なら、奴らはずっと追いかけてくるからだ。どんなに小さな失敗も、どんなに昔の失敗もずっと俺を追いかける。
奴らは俺を捕まえて嘲笑いながら言う。
「お前は今まで何もしていない。お前はこれからも何もできない。」
俺はその言葉が嫌いで、その言葉を聞きたくなくて奴らから逃げ続ける。逃げても逃げても逃げきれない。
奴らは休むことなく追い続ける。だから、俺も休まず逃げ続ける。

ある日、怒りを抑えきれなくなって奴らに向かって問いかけた。
「何故俺を追いかける。どうして俺を苦しめる。」
奴らは立ち止まりこう言った。
「私たちはお前を追いかけてなどいない。私たちはお前を苦しめない。」
俺には奴らの言ってることがわからない。現に奴らは俺を追いかけているし、苦しめている。やはり奴らは、俺を馬鹿にしている。
和解するなど有り得ない。それからも俺は逃げ続けた。

毎日毎日逃げているからか、次第に奴らに捕まらなくなった。奴らが近づく気配を察知して、巧みに奴らを躱していった。
とうとう俺は奴らから逃げ切り、栄光を掴むことができた。
今までの怒りを、苦しみをぶつけてやろうと、振り返り奴らにこう言った。
「今の俺を見ろ。もう何もできないとは言わせない・ぞ・・」

彼らは俺に微笑みかけていた。



Copyright © 2015 孤独な獅子 / 編集: 短編