第155期 #1

マックの女子高生

俺、朝から朝マック。朝だから朝マック。ソーセージマフィン。食べる。ホットコーヒー。Sサイズ。飲む。隣の席。女子高生。なんか喋ってる。

「マジ、ありえなくない!?」
「かもね」
「だよね!あたしたちの祖先がチンパンだったつうならさ、え?何?私たちは元々チンパンなわけじゃん?」
「だね」
「でさ、チンパンだったのに突然か徐々にか知んないけどさ、進化?して家建てたりユニクロで服買ったり、テレビでゲーノー人とかやっちゃってるわけじゃん?」
「ユニクロいいよね」
「その前は海の中で生命的に発展して、地上に上がってきたって話もあるけどさ。いくら便利を求めたからって魚に手足が生えるかね?じゃ何?あたしらも念じれば何世代かあとの子々孫々にはもう一本でも手足が生えるわけ?それアシュラマンじゃん!くっそウケるわ」
「アシュラバスター強いよね」
「だけどさチンパンとあたしらの遺伝子の違いって結局何%くらいあんのって話じゃん。遺伝子1%相当だけでも約3200万対のDNA塩基があってだよ。それが偶然の重なり合いでチンパンからあたしらに構造変化を起こしたんですなんつう説が通るんじゃさ全部偶然でしたありがとうございますじゃん!んなこと言ったらこのハンバーガーも偶然の出来事から進化を遂げて今じゃなんとアイドルグループでステージのセンター張ってますとか調子乗りかねなくね?」
「ハンバーガーアイドルならぬアイドルハンバーガーね。ハンバーガーキッド」
「つまりさ、進化とか語っちゃってるけどさ、チンパンから人になったことが証明されようがされまいが、今のあたしらお構いなしに朝マックしてるんだよね。陸地にエサを求めてきたとか言ってるあたしらの祖先がフィレオフィッシュになっちゃってるのすげーやるせないわけ」
「食うけどね」
「タルタル絶妙だけどさ。そりゃくら寿司もいくよ。てことはさあたしらが魚だった時のままのがあたしらは幸せだったんじゃないかってこと。つまり生の発展を求めて死への頻度が上がってしまったことを不幸とするなら足とか伸ばさずに海で優雅にやってりゃ良かったんだよ。サメに食われるかも知んないけどさ、少なくともフィレオフィッシュはしてねーよな」
「今度は生き伸びろよ。ガブッ」

彼女たちはその後生まれ変わりの話に発展していった。俺は聞き耳立てすぎて仕事に遅刻した。



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