第152期 #1
きっと世界のどこかで、今、人は死にまた新たな命が生まれている。ほら目を閉ざして想像してみよう。死のちかくに立たされている人を。一歩進めば、先も見えぬ闇。
人はいつかこの死の近くに立つのだ。
そして、私も死の近くに立っているのだ。
ピッピッ。シューシュー。
私の命を唯一繋いでいる、機械の音。
意識は、周りの人から見たら眠っているよう見えるかもしれない。だけど、それは瞼が重くて
あがらないだけで、意識はあると自分自身では思う。
音もよく聞こえる。ていうより、周りが見えないから聴覚が敏感になっている。
私のそばにいるのか。いないのか。よくわからないけど、泣き声が聞こえる。
私の為に泣いてくれているの?こんな私の為に?
……ああ。笑えてくる。私の一歩先には闇がある。進めば何があるかわからない。そんなことわかっていたはずなのに、今更怖くなってきている。今更生きたいと思ってしまう。
こんな情けない自分自身が笑えてくる。
生きたいなんて、思ったらダメ。
でも……生きたい。私は生きたい。
「きゃああああっ!」
いきなり一歩先の闇に吸い込まれ堕ちていく私。
ああ……もう、私は死ぬんだ。
堕ちていく間に私の今までの人生が走馬灯野ように頭を駆け巡る。
今までの私の人生。関わった全ての人に言いたいこと、ありがとうとごめんねだった。沢山、人を傷つけた。ごめんなさい。沢山人に感謝しなければいけない。ありがとうございました。
ダンッ。私の体がうちつけられる。
「いった……」
そして、いきなり体が上の方にグインと引き上げられる。
「!?」
「な、何!?」
そしたら、今まで真っ黒の闇のなかだったのに、パッと場面が変わった。
私は空を飛んでいた。下に見えるのは大きな森と小さな集落。家が建っていた。
ここは……天国?
「生きなさい」
するとこんどはどこからか声がした 。
またパッと場面が変わった。
「梨花子……梨花子!! 起きて!梨花子!!」
「ん…………」
「……っ!! 梨花子!!梨花子!!私が分かる!?」
「お姉……ちゃん……。なんで、泣いてるの?」
私は自分のてをお姉ちゃんの頬当てる。
「梨花子……っ、よかった……本当に、よかった!!」
「…………!」
さっきのことを、今までの事を思い出した。
『生きなさい』
ありがとう……。ありがとう……!
私は、生きる。精一杯生きます。