第149期 #2

僕は疲れていた

僕は疲れていた

「確かに謝るよ きょうのデートは失敗だった」
僕は言った。多分僕の方が悪かったんだろう 2人して休日にあんな糞映画を見にくべきじゃなかったんだ。いい席に座れなかったのに大して面白くなかった。

「だからといってひっぱたくことないじゃないか」

僕は君に言った
「その上 あのフランス料理店では水をかけてきた」

あのフランス料理店は予約したのに偉く待たされた
どうも予約の仕方がまずかったみたいだ 
おまけに料理もおいしくなかったのだ ネットの口コミは当てにならない


「そんなんだからいつまでもうだつが上がらないのよ」

彼女は言う
「あなたは大学の非常勤講師のままよ」

僕は大学の非常勤講師をしている 40近くなっても一向に
いい職業にありつけそうにない 先に良い展望などない

「それでもいいじゃないか これからも 今まで二人ですごして来た時間
それを大切に」

「何言ってるのあなた 私だってもうすぐ30よ 結婚して
子供だって生みたいわ」

彼女は金切り声をあげた 

彼女もいい年なのだ だから最近イライラしている
僕だって結婚して家庭を持ちたい でも今の収入では

「子供なんて要らない 結婚なんて形だけのもんだ 役所に行って
書類を出せばいい」


結婚なんて紙切れだ 所詮ただの約束 別に子供なんて持たなくても良い
最近はそれだって普通だ

でも 彼女は言う 

「そんなんだからモラトリアム人間なのよ」

彼女の怒りの数値はマックスに上がった


「やれやれ」 
ここで僕はゲームを中断した
スマホのアプリのゲームをやっているがどうもうまくいかない
自分の設定を入れたアバターはいつも彼女にしかられてしまう

まあ彼女なんてこの数年いないわけだが
今日も選択したデートコースは失敗だった
つぎはどうしようか

「次は代々木 代々木」
満員電車の中 家に帰れば一人だ 冴えない大学非常勤講師
今日も明日も 先は見えない

僕は疲れてきた



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