第141期 #2
「居眠りは許さんからな。寝た奴は立たすぞ」
チャイムと同時に教師が言い放ち、クラスが凍りつく。
教師の名前は知らない。
自己紹介もせずにいきなり授業を始めたからだ。
そんな人に、私たちはなぜ怯えなければいけないのだろう。
そのことに理不尽さを覚えないでもないが、反抗する気力もないのでただ椅子にかしこまって座り耐え忍ぶ。
のろのろと進む淀んだ時間に閉じ込められた気分だ。
番号で呼ばれ、反抗すると叱られ。
これでは囚人と変わらないではないか。
私はひとりごちる。
「お前らは甘いんだよ」
教師が鼻をひくつかせながら怒鳴る。
それが何か?と私は思う。
甘い蜜を吸って生きることを願うのってそんなにいけないことですか?
私は窓の外を見つめる。
代わり映えしない日常から目を逸らして、自由に移り変わっていくものを心から求めていたかった。
空にはぼこぼこの雲が沢山浮かんでいる。私はこんなことを思う。
いいよな。雲はどこにでも流れていけるのだから。
だが私は同時にこうも思う。
何の後ろ盾もなく一人で流れていくのって、案外大変かもな。
雲の間にオレンジの湖が見える。
雲間の核融合炉だ。
私は名前を知ることもないだろう教師Aをつまみあげてそこに沈めた。