第135期 #14
なぜ喜びは、悲しみには涙の色ほどには、息を止めても、気がついてしまっていても。
待っている。爆撃機の上空の虹の色を決めて、ああ、ななつ、ああやっつ。
ロックスターにインタビューしたことがある。
政治家にインタビューしたことがある。
あなたにインタビューしたことがある。
あたし自身、ビルから飛び降りたことがある。
パリを過ぎて、ジブラルタルを渡って、戦車の葬列、オーロラの向こうで、もう誰も追ってこなくなってから、あたしは赤いボタンを押す。
爆弾がすうと、息をとめたようにすうと降り立ち、翼を広げる。
(ロックスターにインタビューしたことがある)
(政治家にインタビューしたことがある)
(あなたにインタビューしたことがある)
(あたし自身、ビルから飛び降りたことがある)
(こんなこと恥ずかしすぎて誰にも話せない)
きっともっといいやり方があったと思うけれども、予算ももっとあっただろうと思うけれども、何とかもっと色々なインチキができたと思うけれども、ともかくも爆弾は翼を広げ、大地に降り立ち、平和に統治し、爆発し、全てを泥以下に変えていく。
泥以下。まるでパレード。泥以下。そしてその後はもっとパレード。
爆発の化学反応で、花は花々咲き乱れ、虹は虹々咲き乱れ、オーロラはイケア、ニトリでは鍵盤。
そしてイケメンが9人。
「アナタニガンシャヲブッカケシテ、ハラマセタイデス」
何て面倒なことになったんだ、と思い、それでも何とか攻略するならこれかなあ、というイケメンを消去法で選び(「センパイ! センパイニガンシャヲブッカケシテ、ハラマセタイナ!」的褐色弟系モジャ毛キャラ。「泥以下!で検索」)
「そうよ、褐色なんて色は、神がわかつた色の、その七色の中には入っていないのよ」
課金をしないよう気をつけてエンディングまで攻略し、
「南と北の戦争が終わって、お前は今から隷属では無くなったのよ」
と告げる。
そうすると褐色弟系モジャ毛イケメン(確かに設定どおりにクォーター顔で、他のハーフのキャラと見事に描き分けが出来ている事にエンディングに至ってようやく気付く)はあたしには解らないが重要であろう方角に膝をつき、恐らくは重要であろう所作で礼を何度もして、そしてその方角に、どこまでも走って行ってしまった。
見えなくなってから、よくもまあこんなものが新人賞とはいえ、メジャーから出版されたものだなあと、あたしは思った。