第129期 #1

もう駄目だ、死ぬしか無い

中学の吹奏楽部に入って一番嫌だったのは筋トレで音を大きくするためとか部長は言ったが、しかし俺は剣道部でそういう理不尽なことが嫌だったから新しい事やるなら文化系に入ろうと思って入部したのであるから、練習メニューに筋トレがあると知ってうんざりした。それだけならまだ良かったのだけど、チューバを吹いていた木村さんという一つ上の先輩のチューバに押さえつけられている大きな胸の押さえつけられ具合に目が離せなくなったと思ったら、告白して振られており、木村さんが言うには、
「え、えー。……あたし、部内恋愛はしないことにしてるから」
ということで、辞めた。しかしそれから木村さんからは音沙汰が無い。俺も一度振られたショックでもう一度チャレンジする気力も無いのです。部に残った同級の田中はその後部内で彼女を作ったと聞く。本当に恨めしい。
中学はそのまま帰宅部で、主に生活の1/3を寝て過ごし、残りの2/3を飯喰って夜遅くまでゲームして学校に遅刻ぎりぎりに行って授業中居眠りして、出かけても小学校からの友達とゲーセン行くくらいという青春以外のつまらない事に費やしてしまった。
ああ木村さんは可愛かったなあ……とか地球環境の事とか考える、つまらない。
地元の高校に行った。特筆することが無い。木村さんはどこに行ったんだろうと調べたら女子校だったことを憶えている。これ高校じゃ無いな。えっと、文化祭の夜のフォークダンスから目を背けずにはいられないくらいには俺の目は暗く濁っていたと思う。ゲーセンで音ゲーにはまりディーバのEXモードをやっているときだけ無心で居られたのである。無心なので時間の感覚が無いが、みんな大学に行けというので大学に行くことにした。みんな行くくらいだからみんなにあった大学があるのかというと無いが、俺は無心で反復練習を繰り返す音ゲーの経験から受験勉強では無心で似たような問題をとき続けることで、結果それなりのセンターの点をたたき出し、それなりの大学に行く。機械である。
キャンパスは真っ白なキャンバスである。よしモテよう、バンドをやろうと思ってギターを買ったが結局一回しか練習しなかった。フットサルサークルに入ったが朝起きられなくて行かなかった。肝心の授業は友達がいないので、いたたまれず足が遠のく。
思えば俺は一体何か最後までやった事があるのか、何がしたいのか、なにものなのか、どこへゆくのか。どうすれば良いのか。



Copyright © 2013 藤舟 / 編集: 短編