第124期 #17

まつ毛

 美人がいる。きのこを採りにきた山男はそう思って草陰に隠れた。女は薄いシュミーズだけの姿で、胸や太腿の盛りあがりが見えた。山男は勃起した。
 しばらくすると女は姿が見えなくなった。山男は川縁に行って射精した。川下にはメスの狐が水を飲んでいて、折悪くその舌で子宮の入口を舐めたから妊娠して子供が生まれた。人間の子供だった。
 子供はみるみる成長して青年になり、腹を空かして山を下りて村に入った。小さな女の子と出会った。女の子が言った。
「困っていらっしゃる」
 飢えた人を見て救いの手を伸ばさない人などいない。女の子は青年を家に連れて行き、家の人は外の仕事で誰もおらず、自分で食事を作って青年に与えた。青年はありがとうと言ってそのまますぐ老人になって死んだ。
 女の子は悲しんだ。家の人が戻ってきて女の子の話を聞くや驚いたが、女の子の心に同情して異訪人を弔ってやった。火葬にする間際、女の子は亡骸から四本のまつ毛をはさみでジョキリと切り、それから母親からもらった赤いスカーフの隅もジョキリと切り取って、一緒に木綿の袋に詰めて口を麻糸で縛った。女の子は、自分の枕元にそれを置いた。三日三晩経つと、中から醜い蛙と若い男が出てきた。
 男は四本指だった。
「まつ毛を四本にけちるから」
 男に言われて、女の子は恐ろしくなった。女の子は慌ててまだ眠っている父親の所に行き、まつ毛を切って男の手に添えた。
 男の指は五本になったが、父親の金遣いの荒い性格まで男に移った。男は一緒に生まれた蛙に贅沢をさせて、たちまち女の子の家は貧乏になった。女の子は両親から叱られた。そこで女の子は川縁に男を誘い出し、男を川に突き落とした。蛙は踏みつぶした。
 川下の村には女の子の姉が住んでいた。姉は女の子とは父親違いで年が離れており、結婚して離婚してそのままその村にいた。
姉は、新品の靴を履いていたので、よく足元を見ていて、川の中に男がいるのに気づいた。
 姉は男の怖い話を女の子からの手紙で知っていた。姉は川から上がってきた男に言った。
「待っていてください」
 姉は、村中の人たちからまつ毛を切って分けてもらい、掌一杯ぶん集めた。そして男にそれを振りかけた。男からにょきにょき指が生え出し、すぐに男は倒れた。指は神経がとてもたくさん通っている器官だった。だから指がたくさん生えると体内のもっと大事な神経を働かせる力がなくなり、男は死んでしまった。



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