第122期 #1

確信

例えば幼い頃の何気ない記憶ってあるだろう。その中に仲の良かった小さな友人の姿が俺にはある。
そしてその記憶は周りの誰にも残っていない。
その消えた友人はタカシって名前でいつも俺と二人きりで遊んでいたのを覚えてる。それなら周りの誰も覚えてないのも仕方のないことかもしれないが…。
残念なことに俺の記憶以外に彼がいたという証拠がない。だから俺は昔俺の住んでいた田舎を訪れてみた。そこで見つけたのが、ボロボロの仏壇の中で笑ってる、一人の少年。
それは紛れもなく俺の顔だった。
おかしい、いやおかしい、と蹲り頭を抱える俺の横に人の気配。顔を上げると見覚えのある男の子がいた。
「凄いね、ここまできたんだ」
男の子は、笑う。声も聞いたことのある…、
「タカシ?タカシなのか、これは一体…」
「見たまんまだよ、君が死んでいて、僕がそのまま。少し難しいけど、一つ一つをよく考えて繋げていけば解けるパズルさ」
男の子は続ける。
「君は死んだ。遠い昔、僕とおんなじ歳の日に。でも君の意思はそのまま君の世界の中でのみ在り続けたんだ。
今まで生きてきてさ、おかしいところはなかったかい?人を遠くに感じたり、自分がこの場にいるって実感がなかったり、声が届かなかったりすることがあっただろう。
この世界は君の考え得る範囲でしか存在しないんだ、それがどうだい。君は自分の力で真実に辿り着いた」
「いや、やはりおかしい」
「おかしいところなんか一つもないさ。じゃあね、僕の話が本当になるコトバ、教えてあげる。
どうして僕が子供の姿でいるのか不思議に思わなかったかい?それはね、僕が君に作り出された存在だからこそ。君が僕の未来の姿を想像できないからこの姿なんだ。
どうして僕が君の名を呼ばないか不思議に思わなかったかい?それはね、君が作り出した存在は君の思う範囲でしか動けないから、僕は君の名を知らないんだ」

「君は自分の名を、覚えてる?」

思い出せば目も開けない水の中。



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