第12期 #1

壊れた思考

服にケチャップが付いた。これはいけないと思って蛇口を捻りケチャップの付いた服を揉み洗いする。少しずつケチャップは落ちていく。だが、白い服には少し目立つ染みができてしまった。こんな服じゃ、皆に会いにいけないと思った。今日は友達の家に遊びに行く約束をしていたのだった。お母さんは今寝ているから自分で服を探さなくっちゃ。真っ白で清潔な服着て皆に見てもらうんだって張り切っているのだ。タンスの中を引っ掻きまわして探したけど良いものがないって思った。そうだ、弟から借りよう。弟は、服をケチャップだらけにして寝ている。そんな幸せな顔をして僕も眠ってみたいなぁ。僕は心の中で弟に向かって服を借りるよというと、弟は首だけを微かに縦に動かした。弟も白い服が好きだった。タンスの中には白い服がたくさんあった。僕はその中から白いTシャツと限りなく白に近い青色のジーパンを借りた。急いで身に付けたけれど、またケチャップで汚れてしまった。まいったなぁと思ったけどもう動きたくなかった。僕も皆と同じ様にケチャップだらけで床に崩れ落ちると静かに眠りについた。


Copyright © 2003 永瀬 真史 / 編集: 短編