第104期 #12

客の声

 このスーパーでは客の声を常に掲示してより良い経営を心掛けて居た。それらの中でも特に好評を博して居たのが祈祷師の無料除霊相談だった。何か不安のある人や悩みごとのある人がこのスーパーを訪れて除霊を受けたり相談に乗って貰ったりして居た。
 おかげでスーパーは大繁盛で祈祷師の方も以前はホームレス同然の乞食だったが、最近はスーパーを根城にして食いつなぐだけでは無く、スーパーの売り上げに貢献して居ると言う事で給金まで貰う様になった。
 「祈祷師さん私は妻と家庭内別居状態なんですが、どうしたもんでしょう。女房は浮気とかしてないでしょうね」
 「むむむむ、あなた、奥さんはあなたに隠れてカルチャースクールに通って居ますよ。でも浮気はしていません。私が保証します。しかし、むむむむ、奥さんはカルチャースクールの講師さんとラヴラヴですよ、でも浮気はしていません、して居ませんが講師さんといい感じです。そして、むむむむ、浮気はしていませんが、奥さん最近料理がうまく成りませんでしたか、あなたはその為に、女房が浮気して居ると推測なさっている。浮気を隠すために料理をうまくしてごまかして居ると。止めなさい。ゲスの勘ぐりです。ずばりあなたの奥さんは浮気をしているからそれを隠すために料理をうまくしたのではありません。ゲスの勘ぐりです。講師さんといい感じになったからその為に気を良くして料理がうまくなったのです。よござんすか、おわかりですか、あなたの奥さんは浮気をして居ません」
 「そうだったのですか、有難う御座いました」
 こんな感じで祈祷師のお悩み相談は概ね好評だった。その上高額な除霊グッズを売り付けたりと言う事も無く、誠実に相談者の家庭訪問をしたりして支持者を増やして行ったりした。
 「祈祷師さん、私の女房が私のパソコンを使って個人事業をやっているのですが、どうしたらいいでしょうか」
 「うーむ、実は私はあなたの自宅のパソコンを精査しました。その結果ずばりあなたの奥さんは潔白です。個人事業をやって居るのでは無く、被災者の家に救援物資を搬送する業務をあなたのパソコンを使ってやっていたのでした。慈善事業ですからね、恥ずかしくてあなたに言えなかったのです」
 「そうだったのか、反省しました」



Copyright © 2011 ロロ=キタカ / 編集: 短編