第100期 #7
深夜、裏道を歩いていると、死神と出会った……。
「ヘイ、お迎えに参りましたヨ」
「えっ、別に頼んでないけど……」
「やだなぁ旦那。いつでも死は突然やってくるもんなんですぜ。さあ、パ〜っと逝きましょうや」
「じょ、冗談じゃないよ。何で死ななきゃいけないの、どこも悪くないのに……」
「旦那、バカ言っちゃいけないよ。人にゃ寿命ってぇもんがあって、こりゃ自分じゃ分からねぇ。分かってんのはアタシ、死神だけなんでさぁ。だからさ、それをこうやって、わざわざ知らせにきたんじゃねぇですか」
「でも、俺、死にたくない……」
「ン。誰でもそう言うんだ。怖いもんね、死ぬのは。よし、いいもの見せちゃおう。特別ですぜ。ちょいと目をつぶってくだせぇ」
「えっ、こうかい?」
目を閉じると驚いた。辺り一面、ロウソクが火を灯し、ゆらゆらとうごめいてる……。
「これは……」
「へへへ。ビックリしたでしょ。これはね、人の命の灯火なんでさぁ。長くてどっしり燃えてるもの。短くて今にも消えそうなもの。まあ、それぞれでさぁ」
「これが、人の命の灯火……」
「ほら、一つ消えちゃったよ。寿命だったんですね。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……。でもね、消えるだけじゃござんせんよ。新しい炎も生まれる」
するといきなり新しいロウソクに炎が灯った。
「ほらね、新しい命の誕生だ」
人の生死。それは本当に美しい光景だった。俺はいつしか涙を流していた。
「分かりました。寿命なら仕方ない。死神様、俺の命を天国でも地獄でも、つれてって下さい」
「覚悟が決まりやしたね。ン。そんじゃ早い方がいい。ほら、旦那のすぐ目の前にロウソクがあるでしょ。そう、その短くてみみっちいの、それが旦那の命の炎でさぁ。それを一息に吹き消しちゃいなよ」
「みみっちいって、そりゃ言い過ぎだよ……。ああ、これが俺の命の炎……」
「そうそう、思い切って、フ〜っとやっちゃって下さいよ」
「うん。じゃいきますよ」
「ヘイヘイ」
「さようなら、俺……。フ〜っ!」
「ああ〜、ちょっと旦那。そりゃ、アタシの命の炎ですぁ……」