第59期決勝時の「なし」票です(5票)。
仮に投票するのであれば、『硝子の虫』になりそうですが、
この作品のどこが面白いかと聞かれると、
「特に面白くはないよ」としか言いようがない。
「水晶振動子」に関しては、
テンポよし、そこそこ面白い、だけど、この話は何が言いたいの?
3作品の中では一番楽しめる作品ではあったけど、短編というより、面白い部分だけを引っこ抜いてきた感じなので、完成度という意味では、『硝子の虫』に若干劣る。
『こわい話』に関しては、感性の違いなのかな、としか言えない。これはどこが面白いのか、というポイントがさっぱり分からなかった。
ということで、大変申し訳ないですが、推薦作品はナシです。
参照用リンク: #date20070908-101934
59期全作品の中から3つ、と言われればあまり迷うことなく
「オチのない話が書きたい」「月はただ静かに」「水晶振動子」
を挙げることができた。では決勝に残った「こわい話」と「硝子の虫」
が作品として優れていないかといえば、「こわい話」はおもしろい。
どういう女性がどんな場所で誰に話しているのかを想像してみると、
この一見狭い世界の物語に広がりがでてくる。
一方で「硝子の虫」は最初こそ世界に入り込めなかったけれど、
何度か読んでいたらなんだか主人公が愛らしく読めてくる。文句
ばっかり言っている主人公が実は寂しさや先行きの見えない不安から
強がっているようにも思えてきて「半分しか残っていないコーラ」
にぶつぶつ言っている主人公に幸いあれ! と思えてくるのだった。
それで、全作品の中からなら自分の中で最初に挙げた三作品を選ぶ
とバランスがとれている気がするのだが、決勝作品だけから一つ
選ぶのができない。「水晶振動子」と「こわい話」を比べるのは
洋楽と邦楽どっちが好きですか、という問いに答えるようなものだし、
「こわい話」と「硝子の虫」は顔の似ている姉と妹、どっちがタイプ
ですか、ときかれたような気分になる。
・・・・・・というわけで、「なし」を選びます。
(ロチェスター)
参照用リンク: #date20070906-145629
予選で推した作品も残りました。優勝作品に推薦出来る位、心踊ったかしらんと自問自答した結果、今回はなしになりました。
参照用リンク: #date20070902-202923
・水晶振動子(るるるぶ☆どっぐちゃん)
物語内容としては実験装置の中に男を入れて愉しむという具合でとても好感を持てるのだが、ただこの作品を成立させているのが主人公の饒舌な語りのみであるという一点について、退屈であると感じた。そこで「考えるな感じろ」という言葉が出てきてしまえば、それで結構、そこで票を入れる理由としてもよし。私も、そういった感情でがんばることがままある。
氏にとって不幸であると思われるのは、とにかく考えるな感じろ的な言葉に付随しがちな、作家論によって作品が語られてしまう点だ。しかしそれが氏にとって、また書き手にとって最も尊い評価のされ方の一つであることは間違いない。
・硝子の虫(森 綾乃)
「分かりきった結果」とは何であるか。今までの語り手の備えていたメンタリティが、一度に崩壊する。操り人形の糸が見える瞬間、それがどのように見えるか、そこに目を注ぐ必要がある。
・こわい話(長月夕子)
最後の三行をどう受け入れるか。私はあまり感心しなかった。
参照用リンク: #date20070901-235043