第54期決勝時の、#22贋僕、贋冒険小説を書く(qbc)への投票です(3票)。
この世のもろもろを片端から、贋、贋と切ってまわるシニシズムは目新しくないけれど、贋と知っている心臓をあえて高鳴らせる、その滑稽で痛々しいふるまいには、胸を衝かれた。
あらゆる物事に注意深く「贋」を冠しながら、贋の彼女の笑顔を前にして「芯から」可愛い、と嘆息してしまう、そんな主人公のナイーブさに、つい微笑んだ。その「贋彼女」には、戯画的なタッチながら、したたかなリアリティがある。上手いものだと思う。枯れ枝をパキパキ折っていくような文体も成功している。
もぐらさんも言うように、結末にはいまひとつ、物足りなさを感じないでもない。終焉も贋、来世もまた贋ではないか。しかし、贋に贋を重ねた果てに、「来世があればの話ですが、どうか次は良い時代が築けますように」というナイーブなつぶやきが洩れる時、思わずはっとしてしまうことも事実である。(でんでん)
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