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第30期予選時の、#3欠落(清水ひかり)への投票です(1票)。

2005年2月3日 21時46分20秒

 個人的に、間口が狭いが、その分解釈の深淵に底深く沈んで行ける小説が好みである。作者の意図しない捉え方かも知れないが、私はそのように読み、票を入れることにした。
 風景自体や「モノト−ン」「灰色の世界」という語句から、単純に“死”が全編通じての基調なのであろうと思う。そこで、“何故「ピエロ」が死ぬのか”と考える。
 ピエロはもがき苦しみ、断末魔の叫びを上げて黒い海へと沈んで行く。本来“道化”として、生の悲哀をコミカルに体現すべき存在のピエロが、死の間際で地を曝け出す。無理からぬ生の浅ましさである。ピエロはピエロたる自らの生涯を、その最期の一瞬で全否定する。すなわち、かつてピエロであった時の生涯は虚偽へと堕する。
 私はこの“生きる”ということに潜む虚偽性を、「コンクリートの地面にいやけがさす」という一文にも読み込んだ。些か強引ではあるが、コンクリートは濃灰色であり、死の部類に入る表現であるように思われた。一見頑強で、そこへ生の安逸を感じられるかのようなコンクリートが、死の色で彩られているという矛盾。そこに、今主人公の立っている生への虚偽性・刹那性を感じ取り、尚且つピエロが醜く沈んで行った海から目を逸らしたのではないか。
 そう考え至ると、「呆然と」ではなく、“生/死というものを見極めよう”という、強い意志のようなものが感じられてならない。

参照用リンク: #date20050203-214620


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