第229期決勝時の、#3父親の背すじ(朝飯抜太郎)への投票です(1票)。
他作品と比べて文章のリズムが巧みで、物語全体の流れがスムーズで読みやすい。例えば一段落目の、担任への返答の緩急のつけかたであったり、「おやつ!と後ろから泣き声。」のほとばしる子ども感からの体言止め三連続であったり。ラストの「さあ、のぼりなされ〜」というおかしみ溢れるセリフから、「コスパ最強電動自転車」という語感最高ワードに続き、「こんな坂、屁でもない。楽勝だ。」のホップステップジャンプ感。それらのリズムが語り手の感情の動きを表現しており、本作の物語全体の流れを作っている。さらに、上で挙げた箇所以外の、いわば平常時の語りが丁寧で読みやすく書かれているからこそ、語感やリズムが際立つのであって、基礎力の高さというか、「これが、文章力……!」みたいな感覚があります。一書き手として読みながら背筋が伸びる思いでした。
内容については、今期は好みの作品が多く読んでいて楽しかったです。そのなかでも本作は共感できる部分が多くて、こういうのもっと読みたい!と強く思ったので一票。
参照用リンク: #date20211106-081812