第10期予選時の、#25(削除されました)(-)への投票です(4票)。
作品の重さに比べて、このタイトルはアンバランスに思えました。
むしろ作中にある「おまえに聞かせる話はない」にしたほうが言外に語っているような……。
もっとメリメを読みたくても、数少ない作品しか残していないので、どこかメリメに通じる印象が貴重です。
参照用リンク: #date20030607-213100
もっとお話を聞かせて
ロマンティックだ。あらすじみたいだという感想が散見されたが、なぜそのように感じる人がいるのかむしろ不思議だ。
今回はこの一作のみで。他、気になった作品は以下の通り。
妻を返せ
これは初読時そんなに悪くないと感じた。わからないという感想があるようだが、妻が殺されコートの中に隠されたことは、私には明らかなように思えた。しかしそうだとすると、「まさか…。いや、もうどうでもよい。どちらにせよ罰が当たったのだ。」のくだりが不自然ではないか。これでは疑念を感じたがどうでもよくなったのか罰が当たった確信を得て断念したのかわからない。どちらとも取れるというわけでもなく単に言葉が矛盾している。彼の作品ではこのような細部の杜撰さによって全体の印象が大きく損なわれるケースがしばしば見受けられるように思う。
神様ヘルプ!
読んでいて面白かった。実際にこういうことありそうだなと思う。しかし再読すると、困った時の神頼み、というだけのような話で(いやそこがいいのだという意見もあっていいと思うが)一票入れるまでにはいかないかなと思った。(偉そうでごめんなさい)これに入れるとなると他にも入れなきゃならない作品が増えるし。個人的には語り手が男性で下心もあったほうがもっと毒が出て好みの話になったんじゃないかと思う。
干渉
文章もいいし雰囲気もいい。いつの間にか私が消えてなくなるのもいい。でもこういう不条理風ショートショートって、一昔前のSF作家が書き倒してるんだよな。
トモダチ
私が西直氏を買わないのは、彼のスタイルが、人間の根源的不条理とか悪意とかからは程遠い場所にあって、ちょっとひねくれ気味の若者に、ひとふりふたふりセンチな被害者意識を振り掛ければ簡便にできてしまうようなインスタントな憂鬱であるように見えるからである。もしそうだとすれば、この作風で押し進もうとすると、たちまちに、意外と余裕があり自己肯定的な作者の自我と正面衝突してしまう。つまりこのスタイルは早晩行き詰まってしまうだろうという気がするのである。(余計なお世話もいいとこだな)
フリー
なんのひねりもないところがむしろ素直と感じられ読んでいて楽しかった。
参照用リンク: #date20030607-212348
(あ)的第2位です。
この話の場合、舞台設定が重要だと思うのですが、私は明らかに現代ではなさそうで、少しとっつきにくいその時代に、筆力で引っ張られてきました。そしてその異世界をリオの人生を通して十分に堪能できました。「お話」の効能である非日常の体験が味わえる、よい作品でした。
参照用リンク: #date20030607-061651
最近、街なかで浮浪者を見かける事がとみに増えると、あまり観察しては悪いようでもあり、明日は我が身かも知れぬという漠然とした不安もあり、軽い嫌悪感を覚えつつ目を逸らすのが常なのであるが、この作品を読んでからは、彼らにもこれから人生の終わるまでにどこか活躍の場があればよいが――そしてそれは自分自身にもそうあってほしい――と祈るような気持ちになるのである。
大げさに言えば、今期唯一、「人生」というものを考えさせられた作品であった。(海坂)
参照用リンク: #date20030606-195104